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【AICUはるフェス2026 Day1 セッションレポート②】「それ、何なんですか?」——AI漫画の基礎知識をプロ漫画家が聞いてみた



AICUはるフェス2026 Day1セッションレポート

「現役プロ漫画家・ハッシー橋本が訊く!! 生成AI漫画ってどうなのよ?」


AICU media ライターのEMKOがお送りします。





「それ、何なんですか?」——プロ漫画家の素朴な疑問



Crypto Lounge GOXの会場に、AICUはるフェスのモニターが並ぶ中でトークが行われました。AI漫画の制作現場を知らない現役プロ漫画家・ハッシー橋本さん(X@hassytoushi)の質問は、鋭くも素直でした。



「LoRAって、クリスタで言うと何に当たるんですか?」 「食わせるって、どういうことですか?」 「で、それ実際に何をどう使うんですか?」



セッションのおもしろさは、まさにここにあります。AI漫画制作の技術を「知っている側」と「知らない側」が同じテーブルに着くことで、曖昧だった言葉が次々と具体的に解像されていきました。



LoRAとは何か——「ブラシ」に近い存在



AICUで「YOUKAI」を連載する殻尾さん(X@KARA_Beee)は画像生成AIの中で、「LoRA(ローラ)」と呼ばれる追加学習ファイルを多用しています。



殻尾さん: 「クリスタのブラシみたいなものです。有名な絵師が作ったブラシ、みたいな感じで、誰かが作ったLoRAをSNSで共有しているサイトがあって、それを使うとフォーカスが合っていくイメージです」




たとえば「ちびキャラを出したい」と思ったとき、ちびキャラ向けに学習されたLoRAを使うと、何をやってもちびキャラ風の画像が生成されるようになります。その種類は無数にあり、商用利用の可否もLoRAごとに作者が設定しています。



さらに「自分の画風を学習させてLoRAを作る」ことも可能です。これが、AI漫画ならではのカスタマイズ力の核心です。



LoRAについてもっと詳しく:



モブキャラ問題——プロがもっとも「書きたくないもの」



この話題に、ハッシー橋本さんがすかさず反応しました。


ハッシー橋本さん:「モブ、一番書きたくないですよね」


商業漫画の現場では、背景に登場するモブキャラクター(名前もセリフもない通行人・村人など)の作画は、アシスタントが担当することが多いです。しかしアシスタントごとに作画の個性(癖)が出てしまい、統一感を保つのが難しいという課題があります。殻尾さんによれば、これはAIが得意とする領域のひとつです。


殻尾さん:「メインキャラクターの画風を学習させたLoRAを使えば、モブキャラを効率的に生成できます。ヒーローもの・ファンタジーものの村人とか、服を考えるのが面倒くさい場面に使える。1枚の画像から目の動きだけ変えれば良い状態にできれば、5〜15分で終わる作業になる。モブキャラの作画は、AI漫画のもっとも実用的な活用例のひとつといえます。」



殻尾さんによる「YOUKAI」モブキャラ例

殻尾さんによる「YOUKAI」モブキャラ例



ハッシー橋本さん:

「AIなら量産できると思ってたんですけど、そういう話ではないんですね」



ハッシー橋本さんは驚きを見せました。量産ではなく、人間がやりたくない作業をピンポイントで任せる。それがAI漫画の現実的な使い方です。



AI漫画の表現力と限界について議論する登壇者たち



一方で、AIが苦手な領域もあります。殻尾さんが挙げたのが「目」の表現です。漫画では驚きや衝撃を伝えるために目が飛び出るような誇張表現、いわゆる「ポップアイ(pop eye)」を使いますが、こうした漫画的な感情表現をプロンプトで指示するのが非常に難しい。AIは写実的な描写は得意でも、漫画ならではの「嘘」の表現を狙って出すには、試行錯誤が必要になります。 つまり、きちんと表現したいところは手書きが必要です。キャラクターの感情や決めのシーンなど、作品の核心を担う部分はAI任せにできない。AIで効率化できる部分と、人間の手で描くべき部分の見極めが、AI漫画の質を左右するということです。



写真トレースからAIトレースへ——白黒とカラーの壁



漫画家は昔から写真を資料として使っています。しらいはかせ(X@o_ob)が切り出します。



しらいはかせ:

「漫画家って、もともと写真をトレースして使ってますよね。背景も人物も、写真を撮ってそこから線を起こすのは普通の作業です」



ハッシー橋本さん:

「写真を参考にするのは当たり前」

とうなずきます。



既存の画像を参考にして作画に活かすという行為自体は、漫画制作の伝統的な手法です。AIが生成した画像をトレースの下敷きにする使い方は、その延長線上にあるといえます。しかし、AIをトレース素材に使ううえで独自の壁もあります。しらいはかせがハッシー橋本さんに問いかけました。



しらいはかせ:

「漫画はカラーで見たいですか? それともモノクロ派? 縦型漫画(Webtoon)はカラーが主流ですが、『YOUKAI』はあえてモノクロで制作しています」



殻尾さん:

「生成AIの画像って基本的にカラーで出力されます。でもYOUKAIはあえて白黒なんですよ」



「YOUKAI」(11)『セイトカイ』より


しらいはかせ:


「カラーは情報量が多い。白黒に落としたときに潰れてしまう部分がある」という技術的な問題も指摘します。カラーでは区別できていた部分が、グレースケールにすると同じトーンになってしまい、読みにくくなるケースがあります。


加えて、AIでは厳密な色指定が難しいという制約もあります。プロンプトで「赤い服」とは指定できても、「#FF3300の赤」のような正確なカラーコードは反映されません。商業印刷でCMYK指定が求められる場面では、AI出力をそのまま使うことは難しく、必ず人間による調整が入ります。


それでも「YOUKAI」がモノクロを選んだのは、白黒ならではの表現力…スピード線、トーン、書き文字といった漫画の文法を活かすためです。AIの得意なカラー出力に頼らず、あえて制約のあるモノクロに挑むことで、「AI漫画っぽさ」を超えた作品を目指しています。」


著作権のリアル——「学習は合法、でも……」


ここで、しらいはかせから法的な論点の整理がありました。


しらいはかせ

「AIに学習させること自体は合法です。ただし、誰かの絵を勝手に食わせて、それをどこかのサイトにアップロードする権利は持っていない。複製権と公衆送信権の問題です」


SNSで炎上するケースの多くは、他人の作品を無断で学習素材に使い、生成した画像を公開するパターンです。商業誌で活動する作家にとっては、自分の画風を学習させたLoRAを自分で使う分には問題ないが、それを第三者が無断で作成・配布するケースが論点になります。


しらいはかせ

「弁護士によってはアウトでしょと言っている人もいます。ただ、大きなサービスでみんながやっていると、なんとなく許されている感覚になってしまう」

と補足しました。


この法的なグレーゾーンが、漫画家たちが「表には言えない」と感じる背景のひとつでもあります。


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次回予告

記事③では、殻尾さんの実際のワークフローに迫ります。1コマを完成させるまでの手順、AIの偶然を創作に変える方法、そして現実では撮れないものを作る技術とは。


登壇:ハッシー橋本 / 殻尾(からびー)/ しらいはかせ




Originally published at note.com/aicu on Mar 19, 2026.

 
 
 

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