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【特集】『怪奇!死肉の男』曽根剛監督本人が綴る、全編AI長編映画の舞台裏 #AI映画

本稿は、映画『怪奇!死肉の男』を監督した曽根剛氏(@aisonesone)が執筆したプロダクションノートを、ご本人の許諾を得てAICUが再編集したものです。原作漫画の映画化構想から、キャラクター設計、800枚を超える画像生成、動画・音声・音楽制作、チームでの分業、映画祭への出品まで、長編AI映画が完成するまでの工程を監督自身の言葉で紹介します。



映画『怪奇!死肉の男』(英題:The Living Corpse)の原作は、怪奇漫画家・日野日出志先生が、過労で倒れて入院した時期に、幼い子どもたちを残して死ぬわけにはいかないという思いを込めて描いた作品です。グロテスクな怪奇表現の奥に、家族への思いと作者自身の死生観を抱えた物語でもあります。


完成した映画には、日野先生自身と、亡くなられた奥様の写真をもとにAIで再現された人物も登場します。本作を観た日野先生は、「この映画を通して永遠になれた気がします」とコメントしました。


本記事は物語の核心やエンドロール後の場面にも触れています。映画をご鑑賞いただいた後にお読みになることをお勧めします。また、制作記としての具体性を優先し、AIツール名や専門的な工程については詳しい注釈を付けずに掲載しています。あらかじめご了承ください。


AI長編映画化した原作漫画『怪奇!死肉の男』(英題:The Living Corpse)は怪奇漫画家・日野日出志先生がかつて執筆中に過労で倒れ入院し、幼い子供たちを残して死ぬわけにいかないという思いをぶつけて描いた渾身の作品で、ホラーでありながらも感動の物語。


翻訳出版の際、『ターミネーター2』のプロデューサーからハリウッド映画化の話も出たという。完成したAI映画作品には、日野先生自身や亡くなられた奥様もAIになって登場。AIだからこそ実現できた表現を通して、作者の思いを形にした本作を観た日野先生は「この映画を通して永遠になれた気がします」とコメント。





※本記事は映画視聴後に読んでいただくことをお勧めします。なおAIのツール名や専門的な内容も注釈なしで記載しており、AI利用者じゃないと分かりづらい文章もありますことご容赦ください。


上映情報


池袋シネマロサ 7/24〜8/6 17:45-https://www.cinemarosa.net/nowshowing/shiniku/


ヒューマントラストシネマ渋谷 9/4〜 



上映館 (映画.com



叶わなかった映画化の夢

本作のAI映画企画が発足したのは2025年秋。


原作のある漫画作品を全編AI生成で長編実写映画化するというのは当時まだ国内では初になるであろうプロジェクト。


じつは本作は過去に日野先生自身が監督を務めて映画化をしようと試みていました。


先生にとっては久々の監督作になるはずで、漫画とは違う内容も含み、映像化に向けて絵コンテも描いていたほどです。



実写映画化に向けた絵コンテ(©︎日野プロダクション)
実写映画化に向けた絵コンテ(©︎日野プロダクション)


日野先生とは複数の作品で縁があり、本作の実写映画化の撮影には私も参加予定でした。


絵コンテはそのまま独立した作品ともいえる完成度。すごく映像化を意識し、登場人物らがどのように動くのかがわかりやすいものになっています。



原作にはない追加された家族のシーン
原作にはない追加された家族のシーン

しかし、そもそも本作は実写ではどのように表現すべきか悩むシーンも多かったのです。


1つは主人公がすでに死んだ存在であるだけでなく、うごめく蛆虫が湧いているのがほとんどのシーンであること。


もう1つは主人公が自然に帰っていくような描写があるのですが、海の中に沈んでいったかと思ったら、宇宙空間、生命の起源から現代、そして未来にわたるまでを走馬灯のように描いている描写シーン。


いずれの表現も予算の限られた邦画で実現するにはかなり難しいことが想像できました。


企画がなかなか進まないまま年月が経ってしまい、いざ本格始動しようとしたのがちょうどコロナ前というタイミング。

そのままコロナ禍に入り、制作が長期にわたって延期されるなか、やがて体力的に日野先生ご自身が監督することも叶わなくなってしまっていました。


AI映画化に至る経緯

そうこうしているうちにAIで動画が当たり前のように作れる時代がやってきました。


2024年、日本初劇場公開作品となる「generAIdoscope:ジェネレイドスコープ」という全編生成AI映画を作りはじめたときには、自然と本作のことを思い出していました。実写化困難なシーンがAIでなら実現できるかもしれないと。





もちろん実写にはどうしても叶わない、AIならではの不自然さや違和感もまだまだ残ります。特に人間の動きに関してはまだまだ本物には敵いません。ただ本作は怪奇ホラー作品。日常のドラマとは違い、現代をリアルに描く作品ではありません。むしろAIで生まれる違和感のようなものと怪奇作品は親和性があるのかもしれません。


2023年、2024年はまだまだ芸術表現に対するAIへの風当たりは強いものがありました。AI映画だけではありません。AI漫画やAIイラストなど多くの表現が簡単にAIにとって代わられるという不安からか多くの人にとっては死活問題となっていたり、権利侵害が数多く起こっていたり。

そういうことに起因する批判、炎上が頻発。先の「ジェネレイドスコープ」も2024年に公開する予定のリリースには99%の否定的なコメントが相次ぎ、公開も2025年にと先送り。


やがて2025年秋ごろになると、様々な広告にもAIが採用され、徐々にAIへの風当たりも弱くなってきていたのを感じました。そこで思い立ったように本作のAI映画化を日野プロダクションに提案。


もちろん大反対をされるのではないかという懸念もありました。が、その心配は杞憂に終わります。


非常にドキドキしていた中、先生が快諾。完全にストップしていた企画だったので、むしろ、AIでの映画化を楽しみにしていただけるとのことでした。


ただ一方でその頃、日野先生が膵臓がんを患っていると伺いました。




本作は、過去に先生が過労で倒れた時に執筆された作品。


作品を描かれた当時の状況と似たものを感じると、元気なうちに作品を観てもらうためには今むしろ早く作るべき作品なのではないか。


時間に限りがあるかもしれないのでできるだけ早く完成させて観てもらいたいと思いました。


AIで長編映画と考えると3ヶ月くらいはどうしてもかかってしまうだろうと想定し、2025年内には制作を開始。


Geminiを使ったAIキャラクター制作

2025年11月、まずは主要登場人物のキャラクターイメージから作り始めました。


すでにAI映画化にあたってリスクも承知の上で必要な範囲のAI学習の許諾を得た原作があり、漫画という分かりやすい形で表現されていることは作品制作においてかなりの利点でした。ゼロから作るよりイメージが掴みやすいし、そのままの構図が参照できたり、絵コンテにもなります。2025年8月に登場したNano Banana(Gemini3)の存在はかなり大きいものでした。



登場初期のNano Bananaは生成精度がかつてないほど優れてるが得体が知れないと噂になり、8月下旬にはGoogleのモデルだと分かって安心したのか一気に広まりました。


これによってさまざまなカットで一貫性を保ちやすくなったため、長編作品にも取り組みやすくなります。それ以前であればAI長編作品はかなり至難の業だったと思います。



死肉の男メインビジュアル
死肉の男メインビジュアル

Nano Banana(編集部注:Gemini 2.5 Flash Image)で、漫画の表紙から映画のメインビジュアル、そしてキャラクターのデザイン案を複数生成。その中から、気に入ったものを選び出し、擦り合わせをしながらイメージを固めていきます。


主人公である“死肉の男”はフランケンシュタインの怪物を連想させる見た目に。しかし、蛆虫がはっていたり、肌が腐って、骨が見えているのをAIで生成するのはかなり大きな難関でした。


Nano Bananaではこうしたグロテスクな描写はすぐエラーになって出力してくれません。


本作ではメインの画をNano Bananaに提示するとその時点でエラー。肌の露出が多かったり、血が出ていることすらNGになりやすいのに、本作の主人公はさらに腐っていて骨までむき出しなのです。


これはかなり難易度の高い作品に挑むことになったかもしれません。


うまくいかないので、まず見えている骨や腐敗部分を減らすことにしました。上半身裸で骨が見えている造形だとAI化の第一歩すら進めないようです。


そこで作品中に出てくる病院の患者着を着せて露出を限りなく少なくし、ようやくNano Bananaでの編集が可能に。


死肉の男の左腕はつげ義春先生の「ねじ式」の主人公の体勢を意識した左腕。(日野先生はつげ先生の影響を大きく受けており、それを意識していたとのこと) しかし、AIは腕を曲げることをひたすら拒みます。


腕だけや足だけなど体のパーツをAIに参照してもらったりと試行錯誤が続きました。


たった1枚の画像を作成するだけでこの大変さです。漫画1冊を長編映画にするのはどんなに大変なのでしょうか。



原作と違って上着を着せた主人公
原作と違って上着を着せた主人公

AIの進化は凄まじく速い。メインビジュアルを作っているうちにGeminiがアップデートされ、Nano Banana Pro(Gemini 3 Pro)がリリース。



より一貫性を保ちやすくなってきたため、本作にとってもいい技術革新でした。本作の主要人物は10人弱なので、それぞれの正面、左右、クローズアップなどを表したキャラクターシートを作成。


主人公だけは物語が進むにつれて衣装や顔が変わっていくので、全シーンを網羅できるよう多数のキャラクターシートを用意しました。



着ぐるみを着た主人公が着替えた姿
着ぐるみを着た主人公が着替えた姿

本作には原作の日野先生や日野先生の亡くなられた奥様(若い頃)も登場します。本人の昔の数少ない写真をお借りし、AI学習化にも承諾を頂いたうえでキャラクターシートに起こしていきました。


実写だと実現不可能な描写。AIによって実現した夢の出演、夢の共演となりました。



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